みそ汁いろいろとダシについて

講師:南麻布「分とく山」総料理長・野崎洋光さん

味噌汁とダシの関係

味噌汁のダシは煮干しや鰹節、昆布等と考えられがちで、それを実践しておられるご家庭もあるかと思いますが、最近では日々の手間を考えて「だしの素」などを使うケースが圧倒的かと思います。これは「ダシなし」ではおいしい味噌汁は出来ない、という誤った信仰のせいで、じつはダシがなくても十分においしい味噌汁を作ることが出来るのです。 野菜にはそれぞれ独自にほのかな味わいがあります。肥えた土で育った野菜は尚のことです。野菜に限らず豆腐にもワカメにもそれぞれの味があります。じつはダシがこの具材本来の味や香りを消してしまう場合が多いのです。何を入れてもダシの味しかしない、といってもよいでしょう。化学調味料に慣れてしまった舌には物足りなさを感じるかもしれませんが、耳を澄ますようにしっかりと味わえばそのおいしさを感じとれます。 だから私は、ダシを使わない料理をここ何年も提唱しています。おいしくするために取ったダシがかえって味噌汁や料理をまずくしてしまうことが多いからです。

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味噌と味噌汁のはなし

左から赤味噌、田舎味噌、白粒味噌
左から赤味噌、田舎味噌、白粒味噌 味噌には大別して米味噌、麦味噌、豆味噌の3種類があります。これは発酵に使われる麹(こうじ)の原料の違いを表しています。同じ種類でも産地によって色や塩分濃度、発酵期間に微妙な差があり、味や風味も千差万別といっていいでしょう。例えば「甘い」ことと「白い」ことでよく知られている京都の「西京味噌」と「辛口」で「赤茶色」の仙台味噌は、同じ米味噌です。これは米麹の量や発酵期間の違いによります。 ところで「西京味噌」というと、甘くてキメが細かいものという印象が強いですが、中には粗目で塩分の効いたものもあり、甘いのが苦手な人にはおすすめです。 生産量でみると米味噌が約8割とほとんど全国的に生産されていて、豆味噌は主として愛知、岐阜、三重の3県、麦味噌は福岡、長崎、鹿児島など九州で伝統的に生産されています。 よく味噌汁は「合わせ味噌がおいしい」といいますが、確かに個性の違う味噌を合わせることによって、旨さの相乗効果が発揮されます。特に夏は汗をかくため塩分の欲求度が高まるため、やや辛めの組み合わせ、冬はその逆、という生理的な背景もあります。 ちなみに私は、次のような割合の組み合わせをしています。
 夏:豆味噌2+田舎味噌1
 春、秋:豆味噌2+田舎味噌2+白味噌1
 冬:豆味噌1+田舎味噌1+白味噌1

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味噌汁(白粒味噌)

【材料】
  • 水…600cc
  • 昆布…5cm×5cm×1枚
  • 白粒味噌…100g
  • 三っ葉…12本
  • 餅…4枚
  • 椎茸…4枚
【作り方】
  1. 餅は焼き目をつけておく。椎茸は石づきを取り霜降りにしておく。三っ葉は3本ずつ結んでおく。
  2. 水と昆布と椎茸を鍋に入れ、火にかける。沸騰したら、5分程煮出しておく。
  3. (2)に白粒味噌を入れ、餅を入れる。火が通ったら器に盛り、三っ葉を添える。

野崎さんからのワンポイント

白味噌は甘すぎてどうもと思っている人が多いかも知れませんが、ほどほどの甘みでおすすめなのが、ペースト状ではなく、粒々が残っている白粒味噌です。一般の田舎味噌系のものより塩分が少なめですので、水1リットルに対して80〜100gぐらいまで入ります。ややドロッと濃度の濃い味噌汁になりますが、冬場などには体の温まるホッとした味噌汁ができます。焼き目をつけた餅を入れた雑煮風味噌汁、具だくさんの根菜を入れた味噌汁などが楽しめますよ。ただし粒味噌の粒は料理屋では裏ごししますが、家庭では味噌こしなどでこして捨てたりしないでください。全部が食べられるものですから。

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味噌汁(田舎味噌)

【材料】
  • 《a》
  •  水…600cc
  •  昆布…5cm×5cm×1枚
  •  煮干し…6本

  • 田舎味噌…50g
  • 大根…120g
  • 油揚げ…1枚
  • ワカメ…30g
【作り方】
  1. 大根は皮をむいて4cm長さの千切りにしておく。油揚げはタテ半分に切ってから1cmの幅に切る。油揚げは熱湯をかけザルに上げ、水気をきっておく。ワカメは食べやすい大きさに切っておく。
  2. 《a》を鍋に入れ、15分置いたのち(1)の大根を入れて火にかける。半量の味噌を入れ、大根がやわらかくなるまでアクを取りながら煮る。
  3. 昆布と煮干しをとり除き、油揚げを入れ、火が通ったら残りの田舎味噌を入れる。最後にワカメを入れ、器に盛りつける。

野崎さんからのワンポイント

大根を具にした味噌汁には大根の旨み、大根の味がダシとして出ていなければ「大根の味噌汁」とはいえません。水から煮て大根の旨みを出します。そして味噌は大根などの具に下味をつけるために半量を先に入れ、仕上げに残りの味噌を入れます。味噌の香りと酵素を生かすためです。ワカメからもいいダシが出ます。昆布は細く切って入れると具としても食べられます。

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味噌汁(赤味噌)

【材料】
  • 《a》
  •  水…600cc
  •  昆布…5cm×5cm×1枚
  •  煮干し…6本

  • 赤味噌…50g
  • 茹で筍…中1本
  • 豆腐…1丁
  • 菜の花…8本
【作り方】
  1. 茹で筍は縦半分に切り3mm〜5mmの厚さに切る。鍋に筍を水から入れ沸騰したらザルに上げ水気をきっておく。菜の花は色よく茹でておく。
  2. 《a》を鍋に入れ、15分置いたのち火にかける。煮立ったら(1)の筍を入れ、アクを取りながら煮る。
  3. 昆布と煮干しをとり除き、赤味噌を溶き入れる。
  4. 豆腐を手でくずしながら入れて、火が通ったら器に盛り、菜の花を添える。

野崎さんからのワンポイント

一般によくいう赤だしという味噌はありません。豆麹の味噌を何年もねかせると赤茶色の味噌になります。田舎味噌などにこの赤味噌をさし入れるという意味の「赤ざし」から「赤だし」になったといわれています。赤味噌は塩分が強く、さらりとした味わいから夏場の味噌汁に向いている味噌です。具の豆腐は、包丁で切るより手でくずして入れると表面積が大きくなり、汁ともよくからみます。料理屋ではできないこうしたことが家庭ではできるわけですから、是非試してみてください。

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豚汁

【材料】
  • 豚肉(うす切り)…200g

  • 《a》
  • 大根、人参、里芋…各100g
  • ごぼう…80g
  • 椎茸…4個
  • こんにゃく…150g
  • 水…1リットル
  • 昆布…10cm×10cm
  • 田舎味噌…80〜100g
  • 長葱…1本
【作り方】
  1. 《a》は皮をむいて1cmのいちょう切りにして水に放す。ごぼうは5mmの輪切りに、椎茸は軸を取り4つに切る。
  2. こんにゃくはスプーンでちぎり、2分茹でてザルに取る。
  3. 豚肉は湯にくぐらせ霜降りにしておく。
  4. 水1リットルと昆布を入れた鍋に水気をきった野菜、こんにゃくを入れて煮ていく。沸騰したら火を弱めアクをすくい取る。
  5. 野菜に火が半分ほど通ったら豚肉を入れ、田舎味噌を50g入れて煮る。
  6. 火が通ったら残りの田舎味噌を入れ、1cmに切った長葱を入れる。

野崎さんからのワンポイント

切ったこんにゃくや根菜類は一度さっと茹でるとちょうどお風呂に入ったようにさっぱりと雑味やアクがとれます。油で全体を炒める方法もありますが、ここでは炒めずに具材の味を引き立たせるようにしました。豚肉は、具材に半ば火が通ったところで加えます。こうすると豚肉がやせずに肉の旨みも残るのです。味噌も先に下味用に半分入れ、仕上げに残りを加えるようにしましょう。

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じゃがいも味噌炒め

【材料】
  • じゃがいも…300g
  • 田舎味噌…100g
  • 砂糖…大さじ3
  • にんにく…1片(すりおろし)
  • 長葱…1本分
  • 油…大さじ1
【作り方】
  1. じゃがいもを洗って皮ごと水から茹でて、ザルに上げて水気をきる。
  2. フライパンに油を熱して、じゃがいもを炒めて油をなじませる。
  3. 味噌に砂糖を加えて少量の水で溶きのばし、すりおろしたにんにくも加えて、(2)に入れる。味噌が焦げないようさっと炒め、仕上げに長葱のみじん切りを加える。

野崎さんからのワンポイント

私の生まれた福島の簡単にできる郷土料理の一つです。田舎では「カンプラの味噌炒め」といっていました。カンプラはじゃがいもの方言で、この料理は懐かしい味で、子供の頃を思い出します。ご飯のおかずはもちろんですが、これをおやつのように食べていました。酒のつまみにもなりますので重宝すると思います。味噌は家にあるもので結構です。その塩加減と好みで砂糖の分量は調節してください。にんにくはすりおろして風味づけ程度に加えます。本当にご飯のすすむ常備菜です。

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